企業経営者は、日々いろいろな業務に追われています。会社で最も忙しいのは、まず間違いなく社長さんでしょう。商品の生産に開発、サービスの品質管理、従業員の採用や育成、店舗があればその運営と、考えなくてはならない範囲が非常に広く、かつ深くコミットしなければ会社のかじ取りができません。
ジャンボ機の機長が無数の計器を見ながら空の状況を目視し、乗客にも気を配り乗務員に指示を出して、時間通りに無事到着を目指す。経営者の毎日は、そんな姿にも似ています。
そのためか、ともすれば経営者の意識はどうしても目前の課題に集中しがちです。本来であれば移り行く時代や社会環境の中で、自分たちはどんなビジョンを展開し、成長を目指すのかという大局的な視点に立った事業戦略、経営戦略を考えるのが経営者の役割ですが、なかなかその余裕ができません。ホームページの制作も、業者や担当者任せになってしまっているのではないでしょうか。
実はwebサイト(ホームページ)の制作やリニューアルのタイミングは、普段気になっていながらなかなか取り組むことができないでいる、会社のあるべき企業像・経営戦略を改めて考える「絶好の機会」なのです。今回はその進め方について解説していきます。
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会社の姿を棚卸しして、全体像を把握してみる
webサイトは、会社のあらゆる情報が体系的に整理された状態で開示されます。一般的には会社概要、事業(商品・サービス)の説明、事例・実績、組織や店舗の一覧、お問い合わせフォーム、採用情報などが、主だったコンテンツです。特に戦略的な視点がなければ、「まあ、こういうものだろう」と他社のサイトを参考にしたり、制作会社から提供されたフォーマットをベースに構成が決まります。予算も関係するので、小規模事業者のwebサイトはだいたい似通ったコンテンツ構成になることが多いものです。
しかし、マスメディアが企業コミュニケーションの中心であった時代と異なり、デジタルメディアが主体の現代では、規模の大小にかかわらず比較的低コストで自由なコミュニケーションが展開できます。
スマホの普及で検索行動を入口に、BtoBユーザーのみならず一般ユーザーも企業に直接アクセスするようになった今、戦略を持たない無定見なwebサイト構築は非常にもったいないことだと断言できます。自社の特色や強み、魅力を最大限にアピールできるサイトを作らなければ、「自社を選択肢としてユーザーに認識してもらう」段階まで進めないからです。
そこでwebサイトを新たに構築する、あるいは以前作成したサイトに手を入れてリニューアルを図る、というタイミングでは、「どんな戦略に基づいてwebサイトを創るのか」が重要になります。そしてそのためには、会社の姿を一度「棚卸し」して、全体像を把握するプロセスが不可欠なのです。
自社の優位性をアピールするには、競合と比べて何がが違うのか、ユーザーに向けて自社を選択すべき理由・根拠を示す必要があります。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とは孫子の有名な格言ですが、この場合の彼とは競合、およびステークホルダーを意味します。市場の中でどんなライバルがいるのか、顧客をはじめとするステークホルダー(関係社会)はどのような人々なのか。そして現状、自分たちは何を目的とし、どのようにビジネスを展開しているのか。これらの基本的な情報を把握したうえで、ステークホルダーに対する自社のポジショニングを明確にし、競合と差別化できる価値が的確に訴求できるよう、事業のフレームをとらえなおすことが重要です。
自社の棚卸しの仕方
自社の理念的要素
では、具体的にどのように会社の全体像をとらえていけばよいでしょうか。まず核として中心に置くべきは、「なぜこの会社、このビジネスをやっているのか」という理念的背景です。創業者であれば、なぜこの事業を始めたのか。事業を通して何を実現したいのか。事業承継した経営者の場合なら、創業の理念は何だったのか。そして自分はそれをどう考えるのか。時代や社会の変化をどうとらえていて、それにより自分たちの事業はどのように対応していくのか。
理念的要素は経営の方向性をフォーカスし、ビジネスの活動に「自社らしいか、らしくないか」の判断基準を与えるものです。経営用語としてはブランドコンセプト、ビジョン、ミッション、バリューズ、クレド、パーパス、マインドアイデンティティ、社是、企業理念、などいろいろな呼び方がなされますが、呼称の違いは大した意味を持ちません。大事なのは「自分たちの会社は何を目的として、何を目指し、社会に対してどんな価値を提供し、どのような存在でありたいと願うのか」という本質的な部分です。
もし明文化された理念がなければ、経営者としてそこをどう考えるのか、一度とことん突き詰めることをぜひともお勧めします。同時に、幹部社員や現場ではどう考えているのか、アンケートやランチミーティング、ディスカッションなどの手法で尋ねてみてください。従業員数や企業規模、社風によって適したやり方がありますので、例えばリップルネットのような外部専門機関を活用されても良いでしょう。
素材としての理念要素が集まったら、頭を整理するために紙に書き出して並べ、しばらく眺めてみてください。現状のビジネスとそれらがどう関係しているのか、10年後にはそれがどう変化しているのか。理念実現のため補っていくべきリソースは何か。顧客に伝えたい価値は何か。様々な想いが湧き上がってくるはずです。そのまま壁に貼って、何日か見るともなく視界に入れつつ過ごすのも良いでしょう。いわば「ひとりブレーンストーミング」のようなものです。ひとりブレストは、自分のやりやすい方法でかまいません。例えば大きな用紙の中央に社名を記し、放射状に理念要素を配して具体的なビジネス展開を連想していくマインドマップ、ポストイットに理念要素を書き、そこから連想語をつなげていくKJツリー、またネット上にはグラフィカルにチャート図が作成できる「Lucidchart」やオンラインホワイトボードの「Miro」、リストやプロジェクトが管理できる「Notion」など便利なツールが多数存在します。これらを活用してひとりブレストを行うだけでなく、研修のかたちで取り入れて、幹部社員や職場単位でやってみるのも、ひとつの方法です。
理念的要素を言葉で整理するときのやり方は、いろいろあります。例えば、一般的で事例の多い
- ミッション(自分たちの社会的使命)
- ビジョン(将来あるべき、目指すべき社会と企業の姿)
- バリューズ(ミッションとビジョンを実現していくための、自社ならではの提供価値)
の3層で考えてみるのも良いでしょう。
あるいは、下図のように「信条・使命・自己規定、事業領域・社会貢献性、商品サービス・対象社会」に分類し、体系化して考えることもできます。
大切なのは、指南書などに書かれている形式に則ってその内容を網羅することではありません。自社のそもそもの成り立ちと今後について今一度自分の言葉で表現しなおし、「揺るがぬ拠り所、自社の本質」として明確化することです。
企業を取り巻くステークホルダー
次に考えるのは、企業を取り巻くstakeholder:ステークホルダー(利害関係者)です。事業を行っている以上、企業はどうしてもお客さま、顧客を中心に意識しがちになります。しかし企業とは複数の人々が集合した組織体であり、また協力会社と共に経済活動を展開する存在です。店舗や事業所、工場などは地域社会の一員という顔を持ち、地方自治体においては地域経済の一翼を担うものでもあります。そこで顧客以外に従業員、従業員の家族、アルバイト・パート、求職者、新卒(学生)、取引先・協力会社、報道・業界メディア、地域社会(経済界)、近隣住民といった人々もステークホルダーとして考えます。
これらすべての人々に貢献する「ステークホルダー資本主義」という考え方が、企業経営の新たな概念として近年提唱されています。古来から近江商人が是としてきた「売り手よし、買い手よし、世間よし」の、三方よしの伝統を持つわが国にとっては、むしろなじみやすい考え方かもしれません。
また顧客も一つの層とは限りません。現在のビジネスの中心顧客の同心円状に、疎遠顧客、潜在顧客がいます。事業の規模が拡大するにつれ、ステークホルダーの規模・範囲も拡がっています。
自社にとってのステークホルダーがどういう人々で、その人たちに企業は何を伝えたいのか。それを明確にすることで、webサイトやそのほかのタッチポイントで意識すべきコミュニケーションの在り方が浮かび上がります。
経営資源、組織体制
経営資源は、よく「ヒト・モノ・カネ」と言い換えられます。事業を展開するうえで人員と施設や設備、資本は不可欠のものです。スタートアップ企業ではそれらが十分でない場合がほとんどです。また既存の企業でも、新規事業へ進出するにあたって使える経営資源には、制限があります。
そこで理念要素やステークホルダーの棚卸しと合わせて、どんな経営資源がどの程度投入可能か、を見積る必要があります。事業戦略はそれを前提として策定されなくては、現実的なものとなりません。
特に今後は、デジタルメディア、デジタルマーケティングの出番が飛躍的に増大していきます。組織体制を構築する際に、その部分を充実、強化していく必要があります。
- 教育・研修を通じて社内に人材を育成し、組織を充実させていく
- 新たな人材を採用し、不足している知見を補完していく
- 外部リソースを活用し、アウトソーシング化する
などどの選択肢を採用するかによっても、webサイトの構成が変わってきます。これを見極めることも、経営者の重要な仕事といえます。
事業戦略
理念要素の抽出プロセスでは、「何のために、何を目指すか」を明らかにしました。そしてステークホルダーの再認識・明確化を通して、コミュニケーションの対象者を具体的な像として思い描いてみました。
次はいよいよ、「自社の商品・サービスをどのように市場に投入し、ビジネスを具体的に展開していくのか」という事業戦略の策定プロセスになります。経営者としては最も面白い部分であり、とことん知恵を絞り、十二分に手腕を発揮する段階といえます。
この段階でよく用いられるフレームワークとしては、市場に際して機会・脅威を測り、自社の強みと弱みをポートフォリオで俯瞰するSWOT分析があります。また企業の外部環境を政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4要因から推し量るPEST分析も有名です。
上図に示したのは、マーケティングの4P/4Cと呼ばれるものです。4Pでは事業の姿を「売り手側の視点」で構築する際は、「製品:Product」「価格:Price」「流通:Place」「販促:Promotion」の4つを基準に組み立てていきます。一方、「買い手側の視点」でこれを見ると「顧客価値:Customer Value」「経費および時間:Cost」「顧客利便性:Convenience」「コミュニケーション:Communication」という4Cの要素になります。
これら戦略マーケティングのフレームワークは、単に学者が机上で考え付いただけの理論ではありません。古今のビジネスにおけるあまたの失敗例、成功例が研究され、それらを整理し体系づけた中から抽出されたセオリー、ツールです。
頭の中を整理したり、複数の人間で検討したりする場合にこうしたフレームワークが便利に活用できます。そこに独自のビジョンや情熱を重ね合わせ、新しい事業や商品・サービス、ビジネスモデルを理念や関係社会と関連付け、発想・設計していく。これは経営者本人にしかできないことであり、それこそが事業戦略なのです。
一般的にweb、HP制作会社では、実際の事業の立ち上げやサービス設計等の支援は行わない場合がほとんどです。しかし、企業が新規事業を立上げたり、スタートアップで起業するような時は、事業内容やサービス内容が十分固まっていない状況も少なくありません。
そのような場合は、戦略コンサルティング機能も備えながら望ましいwebサイト構築に関する助言や、デジタルマーケティング戦略の支援ができる制作会社を選ぶことをおすすめします。事業戦略とweb構築の両方を見渡せる制作会社を外部の伴走者とすることで、ホームページ制作を機に客観的な視点で、自社戦略を見直すことが可能となるからです。
webサイトの戦略を立案し、作成・公開・運営していく
会社や事業の棚卸しを行い、事業戦略の策定、見直しが完了したならば、あとはそれに沿ってwebサイトを最適化していけば良いということになります。
既にwebサイトをお持ちであるなら、現状のそれと事業戦略とのギャップを埋めていきます。例えば良い商品やサービスがあるのに、知名度が不十分で実績に結び付いていないのであれば、ニーズを持つセグメントに対し有効なSEO対策を施したオウンドメディアを立ち上げ、サイトへの流入経路などアクセスデータを分析してコンバージョン(成約)の向上を狙います。
事業立上げたばかりのスタートアップ時には、実績事例や顧客からのフィードバックなど発信できるコンテンツ(ネタ)があまりない場合もあり得ます。そのようなときは例えば、会社や商品・サービスの紹介ページをLP(ランディングページ)の形で制作し、事業が育っていく過程でコンテンツを充実させていく、という方法もあるでしょう。
アクセスデータが得られて、これまでの状況がある程度つかめるようならwebおよびリアルな集客に効く広告展開、コンテンツ作成、SNSとの連動なども必要になってきます。
重要なのは、webを中心としたデジタルメディアと、店舗や接客、商品・サービス品質などのリアルなメディアが、明確な戦略性のもとで整合性をもって展開されることです。
私たちリップルネットは創業より15年間、約200社のクライアント様へホームページ制作やランチェスター経営コンサルティングの業務を行って参りました。
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